航空管制の話と謳っておきながら、ATISの話で潰れたので、今回は実際に無線の内容を聞いてみましょう。どんなやり取りがされているのでしょうか。
成田国際空港での無線交信(Youtube)
↑こちらを聞きながら見てください。(←めんどくさそー)
1年ちょっと前に、成田空港の南にある、航空科学博物館にて収録されました。
まずはじめは、前回まで話したATISの話です。
「Narita international airport,infomation Golf.0710.
ILS-Y runway 16R approach and ILS-Y runway 16L approach.
Landing runway 16R and 16L.Departure runway 16R.
Parallel approach is progress.Departure frequency 124.2.
Wind 090 degrees 4 knots.Direction variable between 050 and 150 degrees.
Visibility 8 kilometers.Few 2000 feets cumulus.Overcast 10000 feets altostratus.
Temperature 16,dewpoint 13.QNH 1017 hectopascals,3004 inches.
Advise you have infomation Golf.」
(成田国際空港、空港情報G。協定世界時7時10分現在、
ILS-Y方式での滑走路16Rへの進入及びILS-Y方式での滑走路16Lへの進入を実施中です。
着陸滑走路は16Rと16L、離陸滑走路は16Rで運用中です。
平行進入を実施中です。出発管制用周波数は124.2メガヘルツです。
風は真東から毎秒2メートルあります。風向きは北東から南東で変移しています。
視界は8キロメートルです。2000フィートに積雲が少々あり、10000フィートを高層雲が覆っています。
気温は摂氏16度、露点温度は13度、気圧は1017ヘクトパスカル、3004水銀柱インチです。
以上、空港情報Gでした。)
この日は風は弱いみたいですが、どうやら雲が厚く、靄もかかっていて視界はガスっていたのでしょう。それ以外はほとんど問題ない運用のようです。
続いて、出発機に目的地までの飛行許可を出すデリバリーの交信です。
「Narita delivery,Fedex 5157,spot 208,request ...(聞き取れず) Guangzhou,flightlevel 340.
(成田デリバリー、こちらフェデックス5157便、スポット208番にいる。広州へ出発したい、巡航高度は34000フィートを予定。)」
中国の広州へ出発するフェデックス5157便が交信してきました。フェデックスはアメリカに本拠地を置く貨物機の会社です。
「Fedex 5157,...(口ごもる),cleared to Guangzhou airport via BAY-3 departure,flightplanned route,maintain flightlevel 200,squawk 6026,runway 16R.
(フェデックス5157便…広州空港への出発をベイ3方式で許可する。以後は飛行計画通りに飛行せよ。暫定飛行高度は20000フィート、トランスポンダは6026、離陸滑走路は16R。復唱せよ。)」
管制官の中でも、一番簡単そうで一番難しいのが、実はデリバリーだったり。出発方式から、離陸後の飛行高度、トランスポンダという航空機の識別番号を一度に通知するので、ラッシュアワーだと聞き間違いで交信が長引いたりして負担が大きくなる。
「OK,Fedex 5157,...(聞き取れず) BAY-3,after flightlevel 200,squawk 6026,runway 16R,SID is ...(聞き取れず).
(OK、フェデックス5157便は…ベイ3方式で出発、20000フィートで飛行、その後上昇。トランスポンダは6026、離陸滑走路は16R、SIDは…)」
実は、航空管制において、紛らわしい「OK」を使うのはご法度。「Roger.(了解)」や「Wilco.(そのとおりにする。)」の方がいいのだが、外国人にとっては「OK」は自然にぽろっと出てしまうものなのだろう。
聞き取れない部分が多かったが、SIDという出発方式について疑念を抱いているのは、話し方から薄々気がつく。
「Fedex 5157,BAY-3 departure,KISARAZU VOR.
(フェデックス5157便、ベイ3方式で出発後、木更津へ向かえ。)」
管制官からのアドバイスなのか補足なのか分からないが、これがフェデックス5157便のパイロットを困惑させ、数秒間間が空く。
「…BAY-3 departure,is this the last transition after BAY-3?
(ベイ3方式で出発後はどのように飛行すればよいか?)」
おそらくパイロットも成田には不慣れなのだろう。僕も日本人なので、こういう人たちにオ・モ・テ・ナ・シしてあげたいですね。
「…Ehh,BAY-3 departure KISARAZU VOR,then your flightplanned route.
(えー、ベイ3方式で出発、木更津を経由し、その後は飛行計画通りに飛行せよ。)」
「OK,BAY-3 departure,flightplanned route,Fedex 5157,right?
(ベイ3方式で出発後、飛行計画通りに飛行でよろしいか?)」
「Fine.Fedex 5157,contact Ramp control,121.6 for push-back.
(よろしい。フェデックス5157便、ランプコントロールと周波数121.6で交信せよ。)」
「1216 for push-back,Fedex 5157,good-day.
(121.6に切り替える、さようなら。)」
「木更津へ向かえ」が伝わっていないのが気になりますが、この間にも次の出発機が交信してきます。グアム島へ向かうユナイテッド航空197便です。この路線は元々コンチネンタル航空の路線でしたが、ユナイテッド航空と吸収合併したため、現在はユナイテッド航空の路線になっています。
「Delivery,United 197,distination Guam,gate 41,flightlevel 390.
(デリバリー、ユナイテッド航空197便、グアムへ向かう。ゲート41番にいる。巡航高度は39000フィートを予定。)」
「United 197,squawk 3115,runway 16R,report ready.
(ユナイテッド航空197便、トランスポンダは3115、離陸滑走路は16R、準備できたら報告する。)」
「3115,for ready,United 197.
(トランスポンダ3115、了解。)」
呼び出してきたはいいものの、管制官の方はいっぱいいっぱいだったり、遅延している航空機の出発を優先させたり、航空機の搭乗や荷物の積載が終わっていなかったら、出発の順番を後回しにすることがある。
交信が終わるなり、するっと交信に入り込んできたのは、広島行きIBEXエアラインズ11便です。IBEXエアラインズは、たまに出納帳のCMやってるJDLの系列会社で、主にビジネスマンに需要のあるローカル線(成田~広島・小松、大阪~仙台・大分など)に就航しています。ちなみにCMをよーくみると、飛行機が飛んでいますが、それはこのIBEXエアラインズの航空機です。
「Narita delivery,IBEX 11.
(成田デリバリー、こちらIBEXエアラインズ11便。)」
「IBEX 11,Narita delivery,go ahead.
(IBEXエアラインズ11便、こちら成田デリバリー、どうぞ。)」
「IBEX 11,destination Hiroshima,flightlevel 360,gate 68Lima.
(こちらIBEXエアラインズ11便、広島へ出発する。巡航高度は36000フィートを予定。ゲート68Lにいる。)」
「IBEX 11,cleared to Hiroshima airport via TETRA-3 departure,flightplanned route,maintain flightlevel 200,squawk 7303,runway 16R.
(IBEXエアラインズ11便、広島空港への出発をテトラ3方式で許可する。暫定飛行高度は20000フィート、トランスポンダは7303、離陸滑走路は16R。)」
「IBEX 11,cleared to Hiroshima airport via TETRA-3 departure,flightplanned route, maintain 200,7303,16R.
(IBEXエアラインズ11便は、広島空港へテトラ3方式で出発後、飛行計画通りに飛行する。巡航高度は20000フィート、トランスポンダ7303、離陸滑走路16R。)」
「IBEX 11,read-back is correct.Contact Ramp control 128...correction 12...(ここで終了)
(IBEXエアラインズ11便、復唱に間違いはない。ランプコントロールと周波数128…訂正する、12…)」
基本的なデリバリーの流れとしては…
- 出発機からデリバリーへ出発許可を申請
- 空域の状況などから出発を許可もしくは待機
- 出発経路・トランスポンダを指定
- パイロットの復唱が合えば晴れて出発
次はタワーになりますが、ここから先は長くなるので、今日はここまでにします。
英語のヒアリングを勉強しないと…(泣)
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