2013年10月27日日曜日

航空管制の話 Part4

こんにちは!超久々の投稿は、超久々の航空管制の話から。

「Tokyo international airport Infomation R,
0730,ILS Z runway 34L approach and ILS Z runway 34R approach.
Landing runway 34L and 34R.
Departure runway 05 and 34R.
Departure frequency 126.0 from runway 05,120.8 from runway 34R.
And parallel ILS approaches to runway 34L and R are in progress.
Wind 080 degrees 20 knots.
Visibility 2800 meters,rain,mist.
Few 500 feets stratus,scattered 800 feets stratus,broken 1400 feets stratocumulus.
Temperature 21,dewpoint 20,QNH 29.49 inches.
Advise you have infomation R.
(東京国際空港、空港情報R。
協定世界時07時30分現在、滑走路34LへのILS-Z方式進入及び滑走路34RへのILS-Z方式進入を実施中です。
着陸滑走路は34Lと34R、離陸滑走路は05と34Rで運用中です。
出発管制用周波数は、滑走路05からの航空機は126.0、滑走路34Rからの航空機は120.8が割り当てられます。」
滑走路34LとRへの平行ILS進入が進行中です。
風は東から毎秒10メートルあります。視程は2800メートルで雨、靄がかかっています。
500フィートに積雲が少々、800フィートに積雲が点在、1400フィートに層積雲が多数あります。
気温は摂氏21度、露点温度は20度、気圧は998ヘクトパスカルです。
以上、空港情報Rでした。)


今回は気象情報の話を。
  • 「Wind 080 degrees 20 knots.」(風は東から毎秒10メートルあります。)

↑政府専用機と滑走路脇の吹流し
空港に設置されている風速計などのデータを参考にし、この情報が発行された時刻の平均的な風の情報を伝えます。
あくまで平均的な情報なので、データにばらつきがある場合もあります。
たとえば風向きがコロコロ変わる場合は、
  • 「…(平均的な風の情報の後),Direction variable between 140 and 040 degrees.」(風向きは南東から北東の間で変化しています。)
と付け加えます。では、風速が変わる場合は、
  • 「…(平均的な風の情報の後),Maximum 28 knots,minimum 13 knots.(最大で毎秒14メートル、最小で毎秒約7メートルあります。)
と付け加えます。風が風速計では測れないほどのそよ風の場合、「Wind calm」といいます。

続いて、視界や天候に関する情報。
  • 「Visibility 2800 meters,rain,mist.」(視程は2800メートルで雨、靄がかかっています。)

視程が5キロ以上ならキロで、5キロ未満ならメートルで伝えます。
また、霧や靄などで視界が非常に悪いときには、補足情報として以下のように伝えます。
  • 「Runway 34L RVR,touch down 900 meters no change,midpoint 800 meters downward,stopend RVR not available.」(滑走路34Rの滑走路上での視界は、着地する位置では900メートルで変化なし、滑走路中央付近は800メートルより悪化、末端付近では観測値が得られませんでした。)
滑走路ごとに、その滑走路上での視界を伝えます。大きな空港では、着地する位置、中央付近、末端付近に分けて伝えます。
濃霧などのときは、ATISの情報は頻繁に更新されます。
なぜかというと、このような霧の情報は刻一刻と変化するからです。
たとえば、午前7時、滑走路34番左側の着地する位置で1000メートル見えるとの情報を送ります。次の情報が出るのは、その10分後の午前7時10分です。
この10分間に霧がどれくらい変化したかを平均して、濃くなれば「downward」、薄くなれば「upward」といいます。変化がなければ「no change」、観測値が得られなければ「not available」といいます。

続いて、現在の空港周辺の空港の天候。
  • Rain…雨
  • Shower of rain…小雨
  • Drizzle…霧雨
  • Snow…雪
  • Thunderstorm…雷雨
  • Mist…靄
  • Haze…煙霧
  • Fog…霧
  • Sand…砂(黄砂が飛散している場合や砂漠地帯の場合)
  • Volcanic ash…火山灰(これが流れた場合、大概の空港は閉鎖されている)
強弱の度合いは、それぞれの天候の前に「Light(弱い)」「Heavy(強い)」と修飾されます。
晴れている場合は何も言われません。

次は空港周辺の雲の情報。
  • 「Few 500 feets stratus,scattered 800 feets stratus,broken 1400 feets stratocumulus.」(500フィートに積雲が少々、800フィートに積雲が点在、1400フィートに層積雲が多数あります。)


視界が非常によく、雲もない、まさに快晴の場合は「Sky clear」、雲はあるが高高度の場合などには「CAVOK(カブオーケイ)」と放送されます。

雲の量は、空港上空の空を8等分してどれくらいが雲で覆われているかで決めます。
  • Few…8分の2以下(雲がほとんどない)
  • Scattered…8分の3~4(千切れ雲など)
  • Broken…8分の5~7(気象庁ではこの辺から「曇り」とする)
  • Overcast…8分の8(太陽の光がほとんど届かないくらい)
雲がある高度をフィートで伝えます。高度がわからない(薄い雲など)は「Height unknown」、高度が十分高いときは「High cloud」と言います。
 
雲の形は、次のようにいいます。
  • Stratus…層雲
  • Altostratus…高層雲
  • Nimbostratus…乱層雲(雨雲・雪雲)
  • Cumulus…積雲
  • Altocumulus…高積雲
  • Cumulonimbus…積乱雲(雷雲、飛行機が突っ込むと危険なほか、空港運用にも支障を来たす)
  • Towering cumulus…塔状積雲(成長すると雷雲になる)
  • Stratocumulus…層積雲
次に気温を摂氏で伝えます。
  • 「Temperature 21,dewpoint 20,QNH 29.49 inches.」(気温は摂氏21度、露点温度は20度、高度計規正値は約998ヘクトパスカル。)
露点温度というのは、仮にこの空気をキンキンに冷やしたとき、空気中の水蒸気が水となって結露になる温度のことです。ちなみに気温も露点温度も小数点までは伝えません。

QNHは高度計規正値のことです。

1気圧(atm)≒1013ヘクトパスカル(hPa)≒29.92水銀柱インチ(inHg)

航空機に搭載されている高度計は、これを基準にしています。
仮に空港付近に高気圧や低気圧があると、高度計と実際の高度にずれが生じます。
そのため、今の気圧を水銀柱インチで伝え、パイロットに高度計を修正させるのです。


「Remarks」ときた場合は、補足情報です。
積乱雲が空港付近にあったり、1時間あたり30ミリ以上の大雨のときなど、特別な状況の場合はここで報告されます。特に何もない場合、Remarksは流れません。

最後に、今まで流してきたATISのコード(A~Z)を、管制官に伝えるように促します。これにより管制官は、その航空機が最新の情報を知っているかどうかを見極めます。仮に古い情報を受信したと報告があった場合、新しい情報との変更点を管制官が伝えます。

これが、空港の情報を教えるATISの一連の流れです。
航空管制の話と謳っておきながら、ATISの話でしたねm(_ _)m
まあ、これからはもっと航空管制に関する話をしていきたいなと思います!

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