2014年1月26日日曜日

航空管制の話 Part 5

お久しぶりです。話題もないので前回の続きを。

航空管制の話と謳っておきながら、ATISの話で潰れたので、今回は実際に無線の内容を聞いてみましょう。どんなやり取りがされているのでしょうか。

成田国際空港での無線交信(Youtube)
↑こちらを聞きながら見てください。(←めんどくさそー)
1年ちょっと前に、成田空港の南にある、航空科学博物館にて収録されました。

まずはじめは、前回まで話したATISの話です。

「Narita international airport,infomation Golf.0710.
ILS-Y runway 16R approach and ILS-Y runway 16L approach.
Landing runway 16R and 16L.Departure runway 16R.
Parallel approach is progress.Departure frequency 124.2.
Wind 090 degrees 4 knots.Direction variable between 050 and 150 degrees.
Visibility 8 kilometers.Few 2000 feets cumulus.Overcast 10000 feets altostratus.
Temperature 16,dewpoint 13.QNH 1017 hectopascals,3004 inches.
Advise you have infomation Golf.」
(成田国際空港、空港情報G。協定世界時7時10分現在、
ILS-Y方式での滑走路16Rへの進入及びILS-Y方式での滑走路16Lへの進入を実施中です。
着陸滑走路は16Rと16L、離陸滑走路は16Rで運用中です。
平行進入を実施中です。出発管制用周波数は124.2メガヘルツです。
風は真東から毎秒2メートルあります。風向きは北東から南東で変移しています。
視界は8キロメートルです。2000フィートに積雲が少々あり、10000フィートを高層雲が覆っています。
気温は摂氏16度、露点温度は13度、気圧は1017ヘクトパスカル、3004水銀柱インチです。
以上、空港情報Gでした。)

この日は風は弱いみたいですが、どうやら雲が厚く、靄もかかっていて視界はガスっていたのでしょう。それ以外はほとんど問題ない運用のようです。

続いて、出発機に目的地までの飛行許可を出すデリバリーの交信です。

「Narita delivery,Fedex 5157,spot 208,request ...(聞き取れず) Guangzhou,flightlevel 340.
(成田デリバリー、こちらフェデックス5157便、スポット208番にいる。広州へ出発したい、巡航高度は34000フィートを予定。)」

中国の広州へ出発するフェデックス5157便が交信してきました。フェデックスはアメリカに本拠地を置く貨物機の会社です。数年前に成田空港で開港後初の死亡事故を起こしたのはこの会社です。僕にはアメリカ人の英語が聞き取れません(泣)

「Fedex 5157,...(口ごもる),cleared to Guangzhou airport via BAY-3 departure,flightplanned route,maintain flightlevel 200,squawk 6026,runway 16R.
(フェデックス5157便…広州空港への出発をベイ3方式で許可する。以後は飛行計画通りに飛行せよ。暫定飛行高度は20000フィート、トランスポンダは6026、離陸滑走路は16R。復唱せよ。)」

管制官の中でも、一番簡単そうで一番難しいのが、実はデリバリーだったり。出発方式から、離陸後の飛行高度、トランスポンダという航空機の識別番号を一度に通知するので、ラッシュアワーだと聞き間違いで交信が長引いたりして負担が大きくなる。

「OK,Fedex 5157,...(聞き取れず) BAY-3,after flightlevel 200,squawk 6026,runway 16R,SID is ...(聞き取れず).
(OK、フェデックス5157便は…ベイ3方式で出発、20000フィートで飛行、その後上昇。トランスポンダは6026、離陸滑走路は16R、SIDは…)」

実は、航空管制において、紛らわしい「OK」を使うのはご法度。「Roger.(了解)」や「Wilco.(そのとおりにする。)」の方がいいのだが、外国人にとっては「OK」は自然にぽろっと出てしまうものなのだろう。

聞き取れない部分が多かったが、SIDという出発方式について疑念を抱いているのは、話し方から薄々気がつく。

「Fedex 5157,BAY-3 departure,KISARAZU VOR.
(フェデックス5157便、ベイ3方式で出発後、木更津へ向かえ。)」

管制官からのアドバイスなのか補足なのか分からないが、これがフェデックス5157便のパイロットを困惑させ、数秒間間が空く。

「…BAY-3 departure,is this the last transition after BAY-3?
(ベイ3方式で出発後はどのように飛行すればよいか?)」

おそらくパイロットも成田には不慣れなのだろう。僕も日本人なので、こういう人たちにオ・モ・テ・ナ・シしてあげたいですね。

「…Ehh,BAY-3 departure KISARAZU VOR,then your flightplanned route.
(えー、ベイ3方式で出発、木更津を経由し、その後は飛行計画通りに飛行せよ。)」

「OK,BAY-3 departure,flightplanned route,Fedex 5157,right?
(ベイ3方式で出発後、飛行計画通りに飛行でよろしいか?)」

「Fine.Fedex 5157,contact Ramp control,121.6 for push-back.
(よろしい。フェデックス5157便、ランプコントロールと周波数121.6で交信せよ。)」

「1216 for push-back,Fedex 5157,good-day.
(121.6に切り替える、さようなら。)」

「木更津へ向かえ」が伝わっていないのが気になりますが、この間にも次の出発機が交信してきます。グアム島へ向かうユナイテッド航空197便です。この路線は元々コンチネンタル航空の路線でしたが、ユナイテッド航空と吸収合併したため、現在はユナイテッド航空の路線になっています。

「Delivery,United 197,distination Guam,gate 41,flightlevel 390.
(デリバリー、ユナイテッド航空197便、グアムへ向かう。ゲート41番にいる。巡航高度は39000フィートを予定。)」

「United 197,squawk 3115,runway 16R,report ready.
(ユナイテッド航空197便、トランスポンダは3115、離陸滑走路は16R、準備できたら報告する。)」

「3115,for ready,United 197.
(トランスポンダ3115、了解。)」

呼び出してきたはいいものの、管制官の方はいっぱいいっぱいだったり、遅延している航空機の出発を優先させたり、航空機の搭乗や荷物の積載が終わっていなかったら、出発の順番を後回しにすることがある。

交信が終わるなり、するっと交信に入り込んできたのは、広島行きIBEXエアラインズ11便です。IBEXエアラインズは、たまに出納帳のCMやってるJDLの系列会社で、主にビジネスマンに需要のあるローカル線(成田~広島・小松、大阪~仙台・大分など)に就航しています。ちなみにCMをよーくみると、飛行機が飛んでいますが、それはこのIBEXエアラインズの航空機です。

「Narita delivery,IBEX 11.
(成田デリバリー、こちらIBEXエアラインズ11便。)」

「IBEX 11,Narita delivery,go ahead.
(IBEXエアラインズ11便、こちら成田デリバリー、どうぞ。)」

「IBEX 11,destination Hiroshima,flightlevel 360,gate 68Lima.
(こちらIBEXエアラインズ11便、広島へ出発する。巡航高度は36000フィートを予定。ゲート68Lにいる。)」

「IBEX 11,cleared to Hiroshima airport via TETRA-3 departure,flightplanned route,maintain flightlevel 200,squawk 7303,runway 16R.
(IBEXエアラインズ11便、広島空港への出発をテトラ3方式で許可する。暫定飛行高度は20000フィート、トランスポンダは7303、離陸滑走路は16R。)」

「IBEX 11,cleared to Hiroshima airport via TETRA-3 departure,flightplanned route, maintain 200,7303,16R.
(IBEXエアラインズ11便は、広島空港へテトラ3方式で出発後、飛行計画通りに飛行する。巡航高度は20000フィート、トランスポンダ7303、離陸滑走路16R。)」

「IBEX 11,read-back is correct.Contact Ramp control 128...correction 12...(ここで終了)
(IBEXエアラインズ11便、復唱に間違いはない。ランプコントロールと周波数128…訂正する、12…)」

基本的なデリバリーの流れとしては…
  1. 出発機からデリバリーへ出発許可を申請
  2. 空域の状況などから出発を許可もしくは待機
  3. 出発経路・トランスポンダを指定
  4. パイロットの復唱が合えば晴れて出発
といったところです。デリバリーは大きな空港にしかないので、小さな空港や、小型機・緊急時ではグランドやタワーが出発許可を担当することもあります。

次はタワーになりますが、ここから先は長くなるので、今日はここまでにします。
英語のヒアリングを勉強しないと…(泣)

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